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2008年6月15日 (日)

今輔師匠と栄助さん

●六代目の古今亭今輔が誕生した。池袋での新真打ちお披露目興行に行って来た。群馬県富岡市出身、東海大学中退の新作派だ。
●落語の新作派には、大きく二通りがあるように感ずる。従来の古典落語の舞台設定、又人物設定を、当今の世情に合わせたものに代えた形で作品を作る姿勢の人。此れが先ず一派。サラリーマンや学生が主人公となる落語が多かったりする。設定は現代的だが、話の呼吸は古典からそう大きく逸脱しない。柳朝さんとか、三枝師匠なんかは此のタイプだと思う。現役だと、昇太さんなんかもそうだし、ちょっと思い浮かぶ所だと川柳つくしさんなんかもこっちのタイプだろう。
●もう一つは、古典落語の枠ぎりぎりの線、落語の枠組みを、踏み出したり、或いは意識的に完全に逸脱したりする、謂わば形式破壊指向型。話の内容もさることながら、其の枠からの踏み出し具合そのものが面白みに繋がる。円丈師匠の落語が何よりそうだし、愛弟子の白鳥さんはそれに輪をかけて破壊的だ。鯉朝さん等トンデモ落語会の面々も多くこちらのタイプ。志らく師匠のシネマ落語もこっち側っぽいな。
●新今輔師匠の場合はどうかと云うと、どうも前者らしい。既に新作を八十本も作っているらしいけれど、余りアヴァンギャルドな芸風とは感じられない。意外と「古風な新作」派っぽい。まだ二回位しか聴いた事がないのでよく分らないけれどね。今回の襲名披露のトリで聴いたのは「極同窓会」と云うネタ。中学時代の仲間が同窓会で久しぶりに再会。ところが当時ひどい渾名を付けてからかっていた奴が、今ではマフィアの様な恐ろしい姿で登場。一同硬直、と云った感じの話だった。
●今輔師匠、大きな名を継いで、此の先何かと大変でしょうが、頑張って下さい。今回は遊馬師匠、ひまわり師匠と合わせて三人の芸協真打ちが誕生。新真打ちのお披露目と云うのは非常に清々しいものがありますな。行った当日の寄席の出し物は、落語のみ列記で以下の通り。
 □ 桂ち太郎  「動物園」
 □ 三遊亭遊喜 「牛ほめ」
 □ 三遊亭遊馬  相撲と落語の後援会
 □ 三遊亭右京  宇宙飛行士
 □ 三遊亭左遊 「寄合酒」
 □ 桂夏丸   「釣の酒」
 □ 春風亭小柳枝「青菜」
 □ 三遊亭円丸 「ちりとてちん」
 □ 三遊亭右紋 「ばばぁん家」
 □ 三笑亭夢太朗「たがや」
 □ 三遊亭遊三 「替り目」
 □ 古今亭寿輔 「地獄巡り」
 □ 桂米丸    修業時代
 □ 日向ひまわり「太閤記より秀吉の婚礼」
 □ 三遊亭遊馬 「お見立て」
 □ 三遊亭小遊三「花色木綿」
 □ 古今亭今輔 「極同窓会」
●今年も「青菜」とか「たがや」の季節なのだなあ。小柳枝師匠はやっぱり良いや。此の日は本当は円雀師匠が出る事になっていたのだけれど、なかなか楽屋に来ない、電話したら、まだ家にいたとの事。至急、お披露目の手伝いに来ていた夏丸さんが代演に立ったのであった。私としては嬉しい代演でした。
●さてさて、落語協会の方でも此の秋に新真打ちが誕生する。そこで春風亭百栄を名乗る事になっているのが、現在二つ目の栄助さんだ。此の方も新作を演る人。栄助さんの新作は、先ほどの区別で云うと後者のタイプだろう。従来の落語的表現の垣根を越えようと、常々創意の痕を見せてくれる。私の好きな噺家さんです。其の栄助さんの会が、巣鴨の庚申塚なんて云う乙な土地で開かれた。私には自転車で行き易い場所。足を運んで参りました。客演はなし。栄助さんだけで以下の三席。
 □ 春風亭栄助 「桃太郎」U.S.A.版
 □ 春風亭栄助 「素人義太夫」
 □ 春風亭栄助 「天使と悪魔」
●「桃太郎」のマクラでは、「浮世根問」のやりとりを、現代の漫才風の「乗りツッコミ」でやるとどうなるかと云う実験を披露。新たな落語的表現の地平を拓こうとの挑戦だが、此れが爆笑ものだった。落語ファンのツボの突き方を心得てるなあ。
●「天使と悪魔」は是非聴いてみたい噺だった。初めて聴く。上野鈴本の高座に代演で上がった二つ目の栄助くんが主人公。ここは思い切って新作落語でお客さんのゴキゲンを伺ってみようと考える。すると其の時、それを押しとどめる「古典の天使」の声が。我に返った栄助くん、やっぱり老舗の鈴本では古典だと考えを改める。ところが「やっちまいなよ、新作」と唆す「新作の悪魔」の声。天使と悪魔の間で悩みに悩む二つ目落語家のお話だ。
●此れ又たいへん面白い噺だったです。でも此れ、栄助さん二つ目の今だから演れるのではなかろうか。真打ちになったらどうするのだろう。「今だからこそ聴けた噺」だったのかも知れない。ならば聴けてよかったよかったと云う事だが。
●ところで栄助さん、昼の末広亭の楽屋で、T家B左右衛門師匠から、或る小咄を高座に掛けてみないかと持ちかけられたそうな。でも即座に断ったらしい。何でもオチが「秋○原だけにメ○ドの土産になった」だったとか。そんなの演れる噺家さん、ブラック師匠以外にいませんわ。

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