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2008年4月28日 (月)

奏楽堂にて(芥川 須賀田 早坂 伊福部)

●昨日は東京芸術大学の木造音楽ホール「奏楽堂」で吹奏楽のコンサートを聴いて来た。素晴らしい。演奏もさること乍ら、先立つ企画其のものに先ずは喝采を送りたい。魅力溢れる曲目がずらりと並んだ演奏会だった。満員のホールで、以下の十五曲が演奏された。
 □ 團伊玖磨 「オープニング・ファンファーレ」
 □ 芥川也寸志 「祝典組曲 no.3 行進曲」
 □ 松平頼則 「日本舞曲第2」
 □ 平尾貴四男 「諧謔曲『南風』」
 □ 須賀田礒太郎 「フーガによる舞踏曲」
 □ 早坂文雄 「映画音楽『海軍爆撃隊』より」
 □ 伊福部昭 「マルシュ・トリヨンファル」
 □ 黛敏郎 「シロフォン小協奏曲」
 □ 松村禎三 「交響曲第一番より 第3楽章」
 <仲入り>
 □ 北爪道夫 「森のファンファーレ」
 □ 湯浅譲二 「火星年代記より "March" 」
 □ 白石茂浩 「フルートと吹奏楽のための『夕鶴幻想』」
 □ 伊福部昭 「SF交響ファンタジー第2番」
 □ 木山光 「Blach Symphony」
 □ 黛敏郎 「NTVスポーツ・ニュース・テーマ音楽」
●オリジナルが管絃楽作品である物も幾つかあるが、吹奏楽用に編曲され、今回は総て吹奏楽で演奏される。初演作品も多く、聞き逃せない作品ばかりだ。実際、つまらない曲や駄演は一つとして無かった。極めて充実した演奏会だった。曲と曲の間の解説トークは無くてもよかったが。
●幾つかの作品について。芥川也寸志「祝典組曲 no.3 行進曲」。芥川氏には珍しい吹奏楽用の作品。陽性の行進曲で、象のパレードを連想させるような、楽しい感じの行進曲。芥川さんは戦中、軍楽隊にいたから、こうした作品をもっと作っていてもよさそうなものだが、案外に少ないらしい。管の響きもいいけれど、メロディーメーカーとしての氏の特質も存分に発揮されて作品と思う。三分程度の曲だったかな。ABAの構成。
●平尾貴四男は平尾正晃のおじさんだ。『南風』と題されている作品、昭和十九年にNHKで放送された記録が残っていると云う。日本軍の南進政策に絡んだ曲かとも思ったけれど、余り南方風の味は感じられなかった。日本風ののどかな曲調。
●須賀田礒太郎は、戦前戦中に結構活躍した作曲家らしいが、戦時中に疎開先の栃木で早逝。其の為戦後は全く忘れられた存在となっていた人。ところが九年前、其の栃木県田沼町の蔵の中から直筆譜がごそっと見つかった。其れを許にCDも出される運びとなった。現在、急速に再評価が進んでいる作曲家であると云う。尤も私は、どんな曲を書く人なのか未だ聴いた事がない。此れが初須賀田体験なのであった。結構息の長い、うねる様なフレーズを、フーガ形式でどんどん反復して行く感じの曲で、なかなか面白い。他にももっと聴いてみたくなりましたな。
●今回の目玉の一つが早坂文雄の曲だ。早坂氏と云えば、黒澤明や溝口健二の映画音楽で知られる人。其の彼は、昭和十五年に札幌から上京、映画音楽でのデビューを果たす。彼が担当した映画音楽の二作目に『海軍爆撃隊』と云う作品がある。東宝の戦争映画の第一作だそうで、木村荘十二監督。円谷英二が初めて特技監督を務めた作品であるとも云う。色んな意味で重要な映画なのである。が、国策映画である故、戦後の訴追から逃れる為に破棄され、以後残念乍ら現存しない作品とされてきたのであった。
●然るに一昨年、大阪のコレクター宅で短縮版が発見され、『海軍爆撃隊』は再び此の世に出たのである。一年前に京橋のフィルムセンターでも上映された。私は見に行けなくて悔しい思いをしたのだった。然し、発見に依り早坂文雄が映画にどんな曲を付けたのかも分った。そして更には、別途、楽譜も発見されたと云う。管絃楽向けに書かれていた曲らしい。今回は其れを吹奏楽用に編曲してある。此れがもうカッコイイのなんの。全くもって痺れる曲。沖縄民謡風のトランペットのソロから始まって、快活明瞭な威勢のいい曲調へどんどん発展する其の勇壮さ。いやあ燃えるぜ。映画のトップシーンに用いられた曲らしい。
●更にラストシーンで流れた曲も一息に続けて奏される。此れ又明るく力漲るような感じ。エディット・ピアフの「Rein de Rein」に似た様なメロディーだ。川柳川柳師匠じゃないけど、開戦前にはイケイケ風味の、快活で勇ましい気風が漲ってますな。
●早坂と来れば伊福部だ。従来伊福部氏の作品年譜には載っていなかった「マルシュ・トリヨンファル」が演奏された。此れも今回の目玉の一つ。伊福部流「凱旋行進曲」で、氏没後に発見された曲だと云う。矢張り戦争前か大戦初期に書かれた作品らしい。ピアノ二台を必要とする大編成の管絃楽曲を、矢張り吹奏楽に編曲し、此の日演奏。
●どんな曲かと云うより、後年のどの作品の原型であるかが関心となる。其れを確かめる姿勢で清聴する。で、此れ、後の『宇宙大戦争』マーチに発展して行く作品なのであった。『吉志舞』『兵士の序楽』と同じ様な立場の曲と云う事になりそうだ。曲が次第に盛り上がって行く所での全休止が、途中二回入るのが特徴だろう。そして二回目の全休止の後、其れ迄で堅固に剛直に築き上げられて来た伽藍が、きらきら光り乍ら崩れ、流れ落ちる様な一気呵成のフィナーレを迎える。四分半程の作品。此れもアツい曲だったなあ。大管絃楽版も聴いてみたいぞ。
●他の作品についてはまた後で。

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