『黎明の風』『PASSION 愛の旅』東宝初日
●良かったですなあ、宙組公演。『黎明の風』と『PASSION 愛の旅』。東京宝塚劇場公演初日に行って来た。
●『黎明の風』は石田さんの傑作。白洲次郎、ダグラス・マッカーサー、吉田茂。気骨ある男達のぶつかり合いが見応え充分。主人公の男の生きざまを快活に謳い上げた芝居で、石田作品の近作としては『猛き黄金の国』や『維新回天・竜馬伝』と同じ系統。作者お得意のジャンルだ。ただ此の人の作品は、いつも闇雲に威勢がいいのだけれど、主人公の野心や大望は常に漠然とし過ぎ、本人以外には具体的な将来像も未来予測図も見えなかったのが欠点だった。緻密な設計なしの楽観的展望と大言壮語。勢いだけでしばしば話が進みがちなのであった。
●然し乍ら今作は、中心人物のみならず、脇役陣の一人一人が、それぞれの立場なりに展望を持ち、計算もし、交渉と説得を方策とし、其の根底に揺るがない自信と信念を持っている。登場人物の夫々が思想を持ち、故に現実味のある活きたキャラクター達が出来上がっている。一本気でありながらも互いに利発で融通の効くオトナの登場人物たち。其の彼等のぶつかり合いで話が進む。イコール日本が動く事になる。
●演出は、日本を取り巻く情勢の移り変りを、限りある此の登場人物たちを動かす事で浮き彫りにする事に成功している。日本の行く末を思う彼等の言動から、遂には日本のありかた、日本のあるべき国のかたちまでが、ありありと示されたようですらある。みごとなもんだ。
●男気の芝居ではあるけれど、白洲正子にしろマッカーサー夫人のジーンにしろ、此れ又きちんと立場を弁えた、芯ある女性として見事に描かれている。彼女達は或る意味今では失われた女性像なのかも知れず、中にはこうした女性のありよう、妻のあり方に反発を覚える人もいるかも知れないが、私は支持しますね、石田さんの女性像。
●出て来る人物誰に対しても敬意を抱ける。尊敬の対象となる。其の点でも希有な作品だと思う。演じる皆さんも誰もが良かった。中でも汝鳥さんの吉田茂が凄かったなあ。
●劇中、戦中戦後の音楽が結構流れていたけど、『リンゴの歌』『蘇州夜曲』『東京ブギウギ』『銀座カンカン娘』と、服部良一作品がずらり。『ASIAN WINS』の時の版権の契約が残ってたりして、使えるだけ使っておこうと云う事なのかな。尤も小沢昭一さんに依れば『リンゴの唄』は実際は其れ程大流行してはいなくて、当時は寧ろ『東京の花売り娘』なんかの方が街中で多く流れていたらしいけれど。
●『月月火水木金金』の威勢のいい合唱は、戦時歌謡好き、川柳川柳好きにはたまりませんでした。
●ショーの方も充実していて、とても良かった。特に中詰めまでのぎっしり感は大いに満足。黒燕尾からワインレッドの衣裳にかわるオープニングに始まって、大空を背景にした場面から、トルコ舞踊、ブラジリアンダンスと、個人的には好みのシーンの連続。美羽さんもよかったしねぇ。兎に角此の公演のDVDは買おう。
●あれ? あれはトルコ舞踊で良かったのかな。衣裳はトルコ風だと思ったんだけど、振付けもそれらしいかったかどうか、自信がない。あんまりクルクル回る事もなかったしな。どう云うつもりの場面だったのだろう。パンフ買うべきだったか。
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